十字軍物語 3

第三次以降の十字軍を扱うが、なんといっても主役は、第三次十字軍を率いた英国の「獅子心(ライオンハート)王」リチャードだと思われる。「ローマ人の物語」がカエサルの魅力を伝えていたように、本書はこのリチャードの魅力を伝えるために書かれたのではないかと思うほどだ。それに対するサラセン側の敵手はサラディンだが、こちらもまた魅力的だ。
第三次十字軍は結局、イスラエルを奪還できなかったので、失敗とみなされている。しかし実際には、「名を捨てて実を取る」というのか、講和によって、キリスト教徒が安心してイスラエルを訪問できるようになり、その後二十年以上続く平和が得られている。それと比べて、現在のイスラエルパレスチナの闘争が、どれほど野蛮に見えることか。
十字軍物語〈3〉