悪人

昨日紹介した「告白」と、毛色はかなり違っているけれども、罪と罰、復讐の意味など、テーマ的には重なっている部分もある。
福岡である娘が殺される。出会い系で知り合った男には金を貢がせ、家が金持ち(温泉旅館の跡取り息子)の大学生と付き合おうとする、ある意味で「人生をなめた」娘だ。殺したのは、妻夫木聡演じる、金のない「出会い系の男」。大学生に車から「蹴りだされた」娘を助けようとしたところを、バカにされ、なじられ、首を絞めてしまったのだ。男は長崎で、土木解体業をしながら、祖父母の面倒を見ている。事件後男は、やはり出会い系で知り合った、深津恵理演じる紳士服店店員のハイミスと、逃避行を続ける。男が子供の頃に訪れた灯台に、二人で住みつく・・・
と、あらすじを書くとどうということもないようだが、主演の妻夫木、深津両氏のみならず、脇役もみな魅力的で(殺される娘は満島ひかり、大学生は岡田将生)、映像としても美しく仕上がっている。ひとつのクライマックスは、柄本明演じる娘の父親が、放蕩学生に向かって、復讐のためにスパナを振り上げるシーンだろう。さて、復讐を遂げることはできるのか。
登場人物は誰も、それなりに罪がある。人殺しの男はもちろんだが、計算高い娘、人を小バカにする放蕩学生、男に自首をさせずに一緒に逃げるOL。いや、樹木希林演じる男の祖母や、柄本明演じる娘の父親だって、育て方の点で罪がなかったとは言えない。誰がどの程度の罪なのか、誰が悪人なのか。
余談だが、岡田将生は、「告白」では単細胞の善良な教師を演じているのだが、クレジットを見るまで私は同一人が演じていることに気がつかなかった。若手だけどうまい役者なんだね。

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