これからの「正義」の話をしよう

ハーバード大学の人気講義(NHKでも放送していた)の書籍化。豊富な実例を基に、読者(聴講者)に正義とは何かを考えさせる。細かな論点に立ち入るよりも、骨太の思考を要求する。
すべての問題について、サンデル自身の見解が示されているわけではない点はやや物足りないが、それでも読む価値は十分にある。私が面白いと思ったのは、カントを扱った第5章。カントというと堅物という印象を持っていたのだが、「嘘はいけない」と強く主張しながらも、「真実だが誤解を招くような表現」なら許されるとしていたらしい。これは詭弁に近いのではないか(あるいは「Bullshit」か?)。
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学