砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ

著者は沖縄タイムスの記者で、特にハワイ大学東西センターに客員研究員として赴任した際の取材活動を基にした著作。主題は、いま大きな問題となっている米軍再編問題だが、本書を読むと、例えば鳩山首相の言う「抑止力の必要から沖縄に置く」といった論理が、いかにウソかよく分かる。米軍基地は、日本のどこに置いてもよいし、減らしてもよい。それは政治が決断すれば済むことで、理屈は後からいくらでも付くのだ。もちろん、軍内部の縄張り争いのようなものはあり、それが例えば嘉手納と普天間の統合を難しくしているのだが、文民統制である以上、政治が決めればそれに従うのだ。沖縄県民の罵声にびびったラムズフェルドが「(海兵隊の一万八千人のうち)一万人減らすぞ」とどんぶり勘定で口走ったことが、そのまま将来計画に反映されるくらいに。
もちろん、現に沖縄に基地が存在する以上、それを動かすのには大きなエネルギーが要る。沖縄に米軍基地を作ったときには、それこそ武力で無理やり農民・庶民をどかせて作ったわけで、現在の民主体制では新たに基地を作るのはより難しい。しかし、これまでの負担の偏りを考えれば、本気で県外(もしくは国外)移設を考えるべきだ。日本は都合よく米国のせいにし、米国では日本政治に厄介な問題を押し付けて恩恵だけ得ようとしている。その背後で、特に基地近辺の住民が、犠牲となってきたのだ。
砂上の同盟―米軍再編が明かすウソ