映画大臣
ナチス政権時代、宣伝相として権力をふるったヨーゼフ・ゲッペルスの行動を、彼の日記を通して詳しく分析した書。10年がかりだという。ただ、日記といってもプライベートなものというよりは、今のブログと同様に、見られることを意識して書いたもので、都合の悪い事象(たとえば愛人とのこと)などはほとんど書かれておらず、自分の日記が未来の歴史史料になると思っていたらしい(実際なっているのだが)。
話は細かくて、ついていくのに苦労するところもあるのだが、実はゲッペルスはさほど映画に詳しいわけではないことや、ヒトラーとの間にもさまざまな確執があって決して一枚岩ではなかったところなどが読みどころか。レニ・リーフェンシュタールについても本書では、相当嘘を言っていると断じている。ヒトラーの悪口を言っただけで、死刑にされてしまう映画人もいた。表現も命がけの時代だった。