漢字キーワード事典

漢字について、大部の本が出るのは基本的には喜ばしいことだ。通読したが、確かに有益な項目はある。特に、中国の歴史的な字書等についての解説はありがたい。
だが、はたして定価の18900円に見合うだけの価値があるかというと、大いに疑問だ。今の日本では、2000円台で、きわめて内容豊富な漢和辞典を買うことができる。それと比べて、コスト・パフォーマンスは非常に悪い。こんな大げさな本にするのではなく、同じように2000円台、ソフトカバーの本にすべきではなかったか。項目の選択も、どういう基準なのかよく分からない。いきあたりばったりだろうか。諸橋轍次白川静といった項目がないのは、時代が現代に近いからなのか。逆に、「魯迅」が立項されている理由もわからない。魯迅は確かに中国文学の巨匠だが、「漢字キーワード」と言えるだろうか。
項目の説明も、特に編者の阿辻氏の執筆した項目で、安直な記述が見られるのは残念だ。具体的には、「点画」や「漢字検定」「表意文字」などで、情報が少ない。
「四角号碼」の項目など、多数の文字が文字化けで「※」となっている。きちんと校正したのだろうか。
344ページの「鉄雲蔵亀」と、345ページの「伝音快字」は、見開きなのに明らかに活字の大きさが違っている。1項目1ページに抑えるための工夫なのだろうが、版面に異様な感じが漂う。
付録も、充実していない。国字一覧は明らかに字が少ない。もっと網羅できたろう。この価格なら、美しい図版で中国の歴史地図や、甲骨文字や文字の入った鬲鼎などの写真も入れることができたはず。きわめて不満の残る本だ。
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