越境者 松田優作

私の若いころ、松田優作は紛れもなくヒーローの一人だった。「太陽にほえろ」のジーパン刑事や、「探偵物語」での工藤ちゃん、カッコよかった。高校の同級生のKなどは、集合写真の時まで、優作風のサングラスとポーズで「決めて」いたほどだ。
本書は、元妻によって素顔の松田優作が描かれている。在日に生まれ、かつ、兄二人とは父親が違い(「松田」という姓は兄の父のもの)、別に正妻のいた実父は母を捨てて逃げてしまった。高校の時、母に、米国で弁護士になれとアメリカ留学へむりやり送りだされたものの、言葉の壁にぶつかり一年足らずで帰国という挫折体験もあった。
優作が引越し好きというのも知らなかった。何度も引越したおかげで二人の貯金は底をつく。生まれた娘を可愛がりながらも、若い女優(後妻となる熊谷美由紀)に手を出し、著者の元を去ってゆく。
著者はシナリオライター・ノンフィクション作家としても知られているが、その割には文章は読みにくいところがある。なぜだろう。
越境者 松田優作