の文学史

ちょっと意外なことだが、「盗作」問題を資料としてまとめた本は、本書以前にはほとんどなかったらしい。その意味で貴重な仕事と言うことができる。完全な丸写しで新人賞を取った作家までいる。井伏鱒二『黒い雨』なども、多くの部分が重松静馬氏の日記からの引き写しで、心象としては真っ黒だ。大薮春彦の初期作品も、海外作品の「無断翻訳」で問題となっている。
だが、モチーフが似ているだけで「盗作」とされたような、やや可愛そうな事例もある。本書は特に主張があるわけではないが、文学における模倣と創造の問題や、あるいは文学賞という商売についても、考えさせられる。
〈盗作〉の文学史