ルイス・ブニュエルの遺作。話の筋としては複雑ではない。七年前に妻を亡くした初老の男(ブルジョアジーの密かな愉しみにも出ていたフェルナンド・レイ)が、女中として雇った若い女に夢中になるのだが、女は男を愛しているのか、愛していないのか、思わせぶりな態度を取ったりするりと逃げたりと、男はひたすら翻弄されてしまう。最初のシーンで、男は電車に乗ろうとする女に、怒ってバケツで水をかける。で、それに驚く電車の同じコンパートメントの人々に、これまでの彼女との関係を遡って語ってゆく、という語り口。若い女は、なんと「二人一役」という思い切った手法が使われているが、違和感はさほど感じない。ただ、入れ替わったときのちょっとギョッとする程度。
もう一つ、裏のテーマに「テロ」がある。各所でテロリストの爆弾が爆発したり、事件が起きたりする。これがどこまで本筋と絡んでいるのかは、私には今ひとつ分からないが、話のスリルを盛り上げていることは確かだ。
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