遺伝マインド

慶応大学で、遺伝子と人間の成長や心理について研究されている安藤寿康教授の著書(慶応には「ふたご行動発達研究センター」というのがあるそうだ)。最近のこの分野における興味深い研究を援用しながら、遺伝子の影響が、おそらく一般に思われているよりも、大きいことを論ずる(といっても、遺伝子はまとまって働くのが通例であり、一つの遺伝子の影響をおよそ分離できるものではない、ともしているが)。58−59ページの「表2」は圧巻で、「認知能力」「パーソナリティ」「才能」「社会的態度」「性役割」「精神疾患」「物質依存」「社会的行動」といった分野で、一卵性および二卵性双生児が、いったいどの程度の類似度を示しているのか、一覧表にしてまとめている(音楽的才能などは、一卵性の一致度は0.92という高い数値を示している)。
それだけではなく、本書はわれわれの一つの態度変更を求めている。それは、遺伝子の影響が強いからこそ、われわれは恵まれない人に対してより利他的に接するべきだ、たまたま良い遺伝子に恵まれて、冨を築いた人は、そうでない人を助ける必要がある、という意見だ。遺伝子中心主義は、必ずしも優生学と結びつくわけではない。
遺伝マインド --遺伝子が織り成す行動と文化 (有斐閣Insight)