検証 東電原発トラブル隠し

2002年に出た岩波ブックレットの一冊だが、今こそ読み返されるべき本だろう。高木仁三郎氏の作った「原子力資料情報室」が著者。東京電力が、これまでにも、福島や柏崎の原発トラブルを隠蔽し、通産省原子力保安院も一緒になって(時には、事実を知らせようとする東電を抑えてまでも)それに手を貸してきたことが、明らかにされている。私も学生・院生時代は、いっぱしの「反原発派」だったが、いつの間にか原発が空気のような存在になり、はっきり言えば全く忘れていた。しかし事態は全く好転などしていなかったのだ。反省するほかない。
検証 東電原発トラブル隠し (岩波ブックレット)

20世紀の歴史 下

ホブズボームの大著の下巻。政治や経済だけでなく、例えば芸術や科学についてもそれなりに目配りをしていて、ホブズボームの碩学ぶりが伺える。巻末の以下のような文章に、氏の歴史観が凝縮されているように思う。

われわれの住んでいる世界は、過去二、三世紀を支配してきた資本主義の発展という巨大な経済的、技術ー科学的過程によって捕らえられ、根こそぎにされ、転換されてしまった世界である。その世界が無限に続くわけがないということをわれわれは知っている。少なくともそう考えるのが合理的であろう。未来は過去の連続ではない(p.444)。

20世紀の歴史―極端な時代〈下巻〉