帝国の残影 兵士・小津安二郎の昭和史

小津について既に多くの著作・論文が書かれている中で、新たに一書をものするのはなかなか勇気が必要なことと思うが、若い歴史学者である著者は、文化史と帝国史という二つの観点から「中国化」をキーワードとして小津を論じて見せた。従軍兵士として小津は何を考えていたのか、なぜ「天津」が「満州」と誤解されたのか、なぜ東京にこだわっていた小津が「小早川家の秋」では大阪を舞台にしたのか・・・魅力的な問いを撒き散らしながら、やや大風呂敷を広げた感はあるけれど、一気に読ませるだけの筆力を持っている。
帝国の残影 ―兵士・小津安二郎の昭和史

間メディア社会における世論と選挙

著者の遠藤薫先生からいただきました。ありがとうございます。
2008年のオバマの勝利したアメリカ大統領選挙、2009年の日本の政権交替選挙、そして2010年の民主党が敗北した参議院選挙などを題材に、そのメディア利用を豊富な図版、実例とともに論ずる待望の著作。特に興味深かったのは、2010年参議院選挙の分析で、2009年に民主党に投票した人のいち、2010年に自民党に投票した人は6.5%しかいなかったという調査結果(ちなみに、2010年にも民主党に投票した人は46.5%、みんなの党に投票した人は32.2%)。まあ得票総数では民主党自民党を上回っているということもあるし、「民主から自民への回帰」などほとんど起きていないことがよくわかる。
間メディア社会における〈世論〉と〈選挙〉 ─日米政権交代に見るメディア・ポリティクス