毎日新聞ニュースより

<高速道無料化>鉄道利用者14%減 高速バスも22%減
8月11日21時11分配信 毎日新聞

 6月に全国37路線50区間でスタートした高速道路の無料化社会実験について、国土交通省は11日、他の公共交通機関や観光、物流への影響を検証したデータを初めて公表した。対象区間と並行する鉄道路線(特急)では、実験開始後1週間での利用者が最大で14%減少。また高速バスでも最大22%減少した。周辺観光施設の平日利用者は1割増えたが、一方で対象区間の渋滞も増加。コスト削減などの好影響があったと答えた物流業者は3割強にとどまった。

 公共交通機関は、6月28日から7月4日までの実験開始後1週間の旅客実績を、国交省が平日と休日に分けて比べた。最も減ったのは北海道のJR函館線、滝川−旭川(休日)など3区間で前年同時期と比べ14%減、京都府北近畿タンゴ鉄道の福知山−宮津(休日)が同10%減だった。同社は「主力の観光輸送が車に転換しているのは明らか。7月下旬から8月にかけてさらに減っている」と話している。調査した28地点中24地点で実験前より利用者が減少した。

 高速バスも岡山道の岡山総社−賀陽(平日)で22%減、道央道の深川−旭川鷹栖(休日)で18%減など、34地点中19地点で実験前を下回った。

 対象区間に近い全国177カ所の観光施設で利用者数を調べたところ、実験開始直後の平日(6月28日〜7月2日)では前年同時期比10%増。休日(7月3〜4日)は14%減ったが、3連休だった7月17〜19日は9%増えた。

 一方で、実験前はほとんどなかった渋滞が急増。西九州道武雄ジャンクション佐世保中央・佐賀、長崎)や、京都丹波道路(丹波−沓掛・京都)では、開始から4週間で25日以上渋滞した。

 無料化区間に近い物流施設282カ所への聞き取り調査では、40%が高速道路の利用が増えたと回答。政府は実験目的に、燃費向上や時間短縮による物流コスト削減を掲げているが、コスト削減効果を感じた業者は36%にとどまり、「良くも悪くもない」との回答が48%に達した。【寺田剛】

■並行する公共交通機関への主な影響地点

▽鉄道(特急)

函館線 滝川−旭川(休日・北海道)14%減

宗谷線 旭川−名寄(休日・北海道)14%減

日豊線 南延岡−宮崎(休日・宮崎)14%減

日豊線 大分−幸崎(休日・大分)13%減

佐世保線 肥前山口佐世保(休日・長崎)11%減

▽高速バス

舞鶴若狭道 舞鶴東−大飯高浜(休日・京都福井)22%減

岡山道 岡山総社−賀陽(平日・岡山)22%減

秋田外環状道路 秋田北−昭和男鹿半島(休日・秋田)19%減

道央道 深川−旭川鷹栖(休日・北海道)18%減

日高道 苫小牧東−沼ノ端西(平日・北海道)18%減

※6月28日から7月4日までの1週間と、鉄道は前年同時期、高速バスは実験直前の1週間の利用者数を、平日と休日に分けて比較。

やっぱり、という感じだ。環境のことを考えたら、自家用車から鉄道へのモーダルシフトを進めなくてはならないのに、民主党はなんということをしてくれたのだろうか。

世界史の構造

すっかり「岩波文化人」と化した柄谷行人氏の、渾身の書と言ってよいのではないだろうか。カントとマルクス、そしてヘーゲルを、単に解釈学、哲学学の材料にするのではなく、本当に世界を変革するための材料として使う。主張そのものは、岩波新書の「世界共和国へ」に述べられている通りだが、もちろん本書の方が中身が豊富となっている。簡単に言えば、「資本=国家=ネーション」が結びついた「ボロメオの環」を、いったいどのように解体するのかということだ。そのために「世界史」が語られる。互酬制という代わりに交換様式A,国家という代わりに交換様式B,市場という代わりに交換様式Cと書かれてあるところが多いので、時々、「これは何だったか」と考え込んでしまった。
残念な誤植が一つ。「論語」の「子罕篇」からの引用として「われは買(買い手)を待つ者なり」(p.202)という表記があり、「買」には「こ」とルビが降ってある。しかしここは「」ではなく「」なのだ。関西の人は「買う」を「こ」と読むのかもしれないが、それは訓読みである(笑)。西洋の思想に強い柄谷氏も、東洋思想には弱いことが露呈してしまった。また、これを見過ごした岩波の校閲部も、質が落ちていないだろうか。
柄谷氏といえば、NAMや、通貨Qの実践は「失敗」したとされている。原理的な書物はもちろん大事だけれど、できればなぜNAMやQが失敗したのか、その総括的な書物を書いてもらいたいとも思う。ひょっとしたら柄谷氏自身が書くよりも、第三者が書く方がよいのかもしれないが。
世界史の構造 (岩波現代文庫 文芸 323)