図説 金枝篇

金枝篇については、いったんは岩波文庫の5冊本を読み始めた(1だけ読み終わった)のだが、こちらに乗り換えることにした。本書は、長い長い金枝篇を、サピーヌ・マコーマック氏が再編集し、多数の写真や図録を加えたもので、(おそらく)元の本より読みやすい。それでも2段組約400ページあるのだけれど、充実感を持って読み終えることができた。ネミの祭司職に関する奇妙な掟(祭司になるには現在の祭司を殺さなくてはならない)の謎を、世界各地の民俗や神話を渉猟することで読み解く。
第七部第八章の、「体から離れた霊魂」の話が、私には一番面白かった。特に、ヒンズーの「プンチキン」という魔法使いの話。王妃を幽閉したプンチキンの魂は、密林の中の壺の下の鳥籠の中のオウムに宿っている。王妃の息子は、妖鬼に買ってこのオウムを手に入れ、オウムの翼をむしりとると、プンチキンの腕が・・・。元の神話はストレートな結末だが、何かもうひとひねりして、短編小説にでもしてみたいところだ。
図説 金枝篇

死刑でいいです

死刑執行された山地悠紀夫に関する本は、昨年末にも読んだ。本書は、共同通信社の池谷孝司記者(確か東京にいた頃に一度お会いしたことがある)が中心でまとめたもの。「山地悠紀夫の二度目の殺人」と比べて、それほど新しい事実出ているわけではないが、関係者の口が堅い中、よく取材されてはあると思う。
第4章は、山地の話というより、発達障害を持つ人々の自助グループの話題。山地はおそらくアスペルガー症候群で、なおかつ劣悪な家庭環境(父は酒乱、母は買い物依存、祖母も悪い)があのような事件を生んでしまったのだ。さらに、「反省」という行為を理解できないことが、被害者の処罰感情の激化に火をつけてもいる。発達障害の人々とどう向き合うか、という問題は重い。
他人事みたいな言い方をしたが、私自身、多少発達障害気味のところがある。たとえば、片付けるのが苦手、とか、同時に複数のことをするのが苦手、というのは、アスペルガーの典型的な症例なのだ。病的とまでは思わないし、また、そのためにメリットになるところもある(学者にはむしろ多いようだ)ので、深刻には受け止めてはいないけれど、時々、どうして世の中の人が(私にとって)こんな面倒なことや不合理なことを平気でしているのかと、苛立つことがあるのは、やはり心の感じ方に多少の違いがあるのかもしれない。
死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人