近所の姫路文学館に妻と出かける。岸上大作展。この夭折(若くして自殺した)歌人について、私は名前くらいしか知らなかった。姫路の郊外、福崎に生まれ、幼時に父親を戦争で亡くす。母は極貧の中で代作を支え、東京の国学院大学に出す。大作も期待に応え、徐々に文名が上がりかけていた。だが、学生運動と失恋の中、大作は自死を選ぶ。
 自死という文脈を離れては、岸上の歌はさほど高く評価されないものかもしれない。それは原口統三などとも共通しているだろう。しかし、その人生の行路と歌が重ねあわされると、やはり心を打つ。遺された母と妹のことを考えると、たとえ文名など挙がらなくても、つまらない人生でも、生きていてくれた方がよかったとも思うが・・・