中高生と情報環境

いずれも毎日新聞ニュースより。

個人情報 書き込みすぎる中学生−−ネット環境調査
 中学3年生女子の6割が自分のプロフィールサイト(プロフ)やブログなどを持っているが第三者に見られている危機意識は薄く、男子は2割がWinnyなどのファイル交換ソフトを使用−−。URLフィルタリングやURLデータベース化事業をしているネットスター社(東京都渋谷区)の調査で、中学生を取り巻くネット環境の危うさが浮き彫りになった。

 調査は7月18日と19日の2日間、インターネットを利用する中学生に約500人にウェブアンケート方式で聞いた。回答者は中2、中3がそれぞれ男女2割ずつ、中1は男女合わせて2割で、男女比はほぼ同じ。住んでいる地域の割合は人口比率に合わせた。インターネットは携帯電話からの接続を含めた。

 ネットをほぼ毎日利用している中学生は5割、毎日2時間以上が3割。よく利用するサイトはヤフーなどのポータルサイト、ブログのほか、「YouTube」などの動画サイトが上位を占めた。男女別に見ると女子はブログ、交流サイト「ふみコミュ」、プロフィールサイト(プロフ)といったコミュニケーションを目的としたサイトの利用が男子より大幅に多い。ネットの利用目的でも、「自己表現(日記や作品の発表)」が女子は4割で、男子の倍以上だった。

 自分のプロフやブログ、掲示板を持っているのは中3女子で6割を超え、中2女子でも5割。男子は2学年とも3割程度なのに対し、やはり女子が多い。だが、大人に見られているという意識は低く、ほとんどが自分のプロフ、ブログを読んでいるのは「友達」「自分と同年代の人」と考えていた。

 ネット上に住所や顔写真、本名を書くのは「危険だと思う」がそれぞれ8割を超えたが、「自分の家の最寄駅、よく行く店」を書くことを「危険だと思う」は5割、「友達のプロフにリンクを張る」は3割にとどまり、危機意識が高いとは言えない結果だった。ネットスター社では「プロフなどを見ていると、住所をすべて書く子はいないが、出身小学校が書いてあったり、リンク先の友達のプロフに『同じ中学』と書かれていたりする。情報がまとまった時の危機意識が薄い」と指摘、「セミナーなどで保護者にプロフの実態を紹介すると、『そんなことまで書いているのか』という声が上がる。大人が知らないので教えていないことも問題だ」と話した。

 ネットで知り合った人と実際に会ったことがあるのは1割。うち、2割は異性と2人で会っていた。知り合った場所は「SNSや掲示板」「自分のブログ・プロフ」がともに4割近い。また、女子では2割が自分の写真を、知らない人にネットで送ったことがあった。

 男子の利用が比較的多いのは音楽ダウンロードで、利用経験があるのは男女合わせて6割。うち、「非合法かもしれないサイトからダウンロード」「友達からもらった」がそれぞれ3割。「非合法サイト」「Winnyなどのファイル交換ソフトを使った」がそれぞれ1割だった。ファイル交換ソフトの利用を学年別に見ると、自分で使っているのは中3男子が2割で最も多い。さらに、「学校の友達」「親」「兄、姉」「ネットで知り合った友達」などをすべて合わせると、ファイル交換ソフトを身近で使っている人がいるのは4割に上る。

 掲示板に「死ね」「うざい」などと書かれたり、自分の名前を使って嘘の内容を書かれた−−など、1割がネットでいじめられた経験があった。自分の個人情報を書かれた(1割)、写真を掲示板に載せられた(2%)などもあった。さらに、ネットいじめを身近で見聞きしたことがある中学生は4割。中3女子が最も多く、6割を超えた。【岡礼子】

 2007年8月1日

学校裏サイト:陰湿化深刻 いじめや脅迫、彼女の裸写真も
 中高生がインターネット上で情報交換する「学校裏サイト」で、いじめや問題画像の流出が問題化している。「裏サイト」は学校が公的に作るサイトとは別に、生徒個人が立ち上げている掲示板で、特定の生徒の写真が張り付けられ「きもい」「死ね」「消えて」の文言が並ぶこともある。頻発する人権侵害に、親や教師たちは困惑している。【山本紀子、佐藤敬一】

 東京都内に住む19歳の少年は、私立高校3年生だった昨年、裏サイトに実名や携帯電話の番号、メールアドレスを勝手に公開され「うざい」「カンニングしている」と書き込まれた。自分の携帯電話には無言電話も数本かかり、中傷メールも1日に10通以上舞い込んだ。サイトには「いじめたい奴」として校内の数十人が実名でリストアップされ、この少年も含まれていたという。

 少年は「同じ学校の女子生徒と交際を始めてから嫌がらせが始まった。彼女の携帯電話にも『あいつと付き合うと犯すぞ』という脅迫メールが届いた」と話す。だれがいじめているのかは分からず、2人は友達に会うのが怖くなり、不登校になった。

 少年は、ネット上でいじめなどの悩みを聞く活動をしている「全国webカウンセリング協議会」に相談。アドバイスを受けてメールアドレスを変えると中傷メールは来なくなった。

 裏サイトでわいせつ写真が広まった例もある。北関東の公立中では「女の体を知りたい」という書き込みに対し、男子生徒が交際中の女子生徒の裸の写真を携帯電話で撮影して添付、大問題になった。校長は「PTAの緊急集会後に突然サイトは閉鎖されたが、別のサイトが立ち上がっていないか不安だ」と明かす。

 学校裏サイトをめぐっては昨年10月、仙台市の中学3年の男子生徒が掲示板で「死ね」と名指しで中傷される事件があり、同級生の女子生徒が侮辱の非行事実で家裁送致された。今春には、大阪府警が女子中学生を実名で中傷するメールを掲載した掲示板の管理人の男を、名誉棄損ほう助容疑で書類送検したが、嫌疑不十分で不起訴処分となっている。

 ◇発見、管理難しく

 生徒たちが立ち上げるサイトは学校の管理下になく、自由にアクセスして情報交換できることから「裏サイト」の名前がついた。掲示板「2ちゃんねる」の学校版とも呼ばれる。生徒たちは携帯電話のメールで裏サイトのアドレスを伝えあい、携帯電話からアクセスする。掲示板ではさまざまな話題でスレッドをたて、ハンドルネームによる匿名でおしゃべりを楽しむ。

 裏サイトに学校名がつけられることはほとんどなく、大人が検索しようとしても見つけるのは難しい。管理人も在校生か卒業生の場合が多い。中には、情報交換だけを楽しむことを目的にし「悪口書き込み禁止」とうたうサイトもある。

 全国webカウンセリング協議会の安川雅史理事長は「裏サイトに部活後のシャワー中の裸の写真を添付された男子生徒もおり、映像を駆使した嫌がらせも多発している。最近は親や教師の目から逃れようとパスワードを設けるサイトも増えており、密室化が進んでいる」と懸念する。

 情報モラルの問題に詳しい千葉県柏市立土南部小学校の西田光昭教諭は「裏サイトは子ども同士の口コミで広まる。子どもが親や教師に隠れてコミュニケーションの場を作っているため、校名で検索してもなかなかたどり着けない。学校側が逐一指導するのは難しい」と指摘する。

 同小は「親も実態を知ることが大切」として、今年初めて保護者向けに携帯電話の使い方について研修を行った。西田教諭は「問題が起きる前に親や学校が使い方などについて指導していくことが大事」と話している。

毎日新聞 2007年8月11日 15時00分

私は、「個人情報保護」を口実に、様々な組織等が情報の公開を拒むような風潮を、全く嘆かわしく思っている。個人情報を含めて、情報は広く流通して意味を持つものであるし、そこから新たな価値が生れる。だから、学齢期の子供たちに、「個人情報は流通すると怖いものだからなるべく隠しなさい」と教えるのは悲しい。広い意味での情報教育は、もちろん必要である。しかしそれは、自分が損をしないためのノウハウ教育ではなく、情報の価値や哲学を教えるものでなくてはなるまい。裏サイトでこっそりと人の悪口を流したり、いじめを行うことが、いかに卑劣な行為であるのか、子供たちが納得できる形で、教え導く必要があるのだろう。