ITが守る、ITを守る

なんか最近NHKブックスの本を結構読んでるな。
本書は東大工学部教授兼歌人の坂井修一氏の著作。東日本大震災関連本かと思って読んだのだが、それだけでなく一般的な災害やデマの話もあり、鴨長明兼好法師も出てくる。第三章「原発事故と情報開示」においては、原子力安全委員会の情報開示のあり方を批判、「蓋然性と修復法の記述まで盛り込むような、従来から二歩も三歩も踏み込むような新しい指針が必要になるだろう」(p.116)という記述を、原子力関係者は肝に銘じてもらいたいと思う。
ITが守る、ITを守る 天災・人災と情報技術 (NHKブックス)

グーグル化の見えざる代償

実は原書を買ってしまっていたのだが、読み終える前に訳書が出てしまった。著者のヴァイデアナサンの本は、以前にも著作権に関する本を(こちらは原書で)読んだことがある。名前から分かるようにインド系で、ジャーナリストを経て現在はヴァージニア大学の教授。
グーグルの問題点については類書も少なからずあり、「すべてのグーグル化」というセンセーショナルな原著タイトルにもかかわらず、本書のオリジナリティは必ずしも多くはない。プライバシー、書物のデータベース化、記憶の問題など、いずれも聞いたことのある話だ。
オリジナリティがあるとすれば、終章の「ヒト知識プロジェクト」の構想かもしれない。「ヒトゲノムプロジェクト」に範を取るこの構想は、「グーグルよりも長く存続する情報生態系を創るプロジェクト」だ。ここで目指されているのは、グーグル批判というよりは、グーグルをよりよく使うための制御であろう。
グーグル化の見えざる代償 ウェブ・書籍・知識・記憶の変容 (インプレス選書)