ロボット兵士の戦争

米国では、戦争にハイテク化したロボットを利用する動きが急である(どこまでロボットと呼ぶべきかという線引きもなかなか難しいが)。この問題について広汎に取材しまとめられた著作で、非常に勉強になる。ユーチューブへの戦争動画投稿の問題や、大阪大学石黒浩教授のアンドロイドの話なども触れられている。著者は、米ブルッキングズ研究所の上級研究員。
ロボット兵士の戦争

故事成語の誕生と変容

故事成語の中には、もともとの典拠から表現や意味が変容したものがある。その中で、「杞憂」「珍魚落雁」「出藍」「朝三暮四」「塞翁が馬」の五つの変遷を「類書」(多数の書物のまとめ的な書物)の読解などから跡付ける。元は一章づつ島根大学の紀要に発表されたもの。特に「杞憂」については、もとの列子のテクストは認識の相対性を示すような弁証法的な思弁が展開されており、興味深かった。天が落ちるの憂える人と、そんなことないと諭す男の次に「長廬子」という人物が出てきて、天地はいつかは崩れ落ちるとしてその両者を批判、さらに列子自身が出てきて不可知論から全員を批判するのだ。
「朝三暮四」については、ちょっと言いたいことがある。これは、朝三夜四ならば怒り、朝四夜三ならば喜んだ猿たちの愚かさ(合計は七で同じであるのに)を描いた成語とされるが、別に猿は愚かではない。朝の食物一単位から得られる効用をx、夜の食物一単位から得られる効用をyとして、猿を愚かと思う人々はおそらく猿たちの効用曲線をU=x+yと前提しているが、この前提は別段正しいとは限らないのだ。朝に特にお腹が空く動物もいるのだから。時間選好まで考慮に入れれば、朝にもらう方が一日分の利子がつく、と考えることさえできる。
故事成語の誕生と変容 (角川叢書)