南島イデオロギーの発生

中心は柳田国男批判。柳田の南島論が、日韓併合という植民地主義への関与を消去・忘却したかったからではないのか、「北海道」と「韓国」とを排除することで「南島イデオロギー」が成り立っているのではないかと、厳しく糾弾する。最初の方の章では、折口信夫については多少肯定的だが、後から追補された部分では、折口にも厳しい批判がなされる。そのほか、金田一京助アイヌ語学への批判も厳しい。金田一はフィールドワークなど全ほとんどせず、知里幸恵・真志保らへの聞き取りのみに頼る「安楽椅子探偵」なのである(足で証拠を集める金田一耕助とは偉い違いだ)。
南島イデオロギーの発生―柳田国男と植民地主義 (批判空間叢書)

デリダ論

ガヤトリ・スピヴァクが、デリダ「グラマトロジーについて」の英訳に寄せた序文。序文だけで一冊の本になってしまうというのがすごい。1974年に原著が出てから、日本語版が出るまで30年経っているというのはちょっと長いが・・・。ヘーゲルを、ニーチェを、ハイデガー等を読むデリダを丁寧に追いかける。デリダと言えばフランス語での「言葉遊び」が有名だから、翻訳は至難の業だろうとも思う。
デリダ論 (平凡社ライブラリー)