市民の国について(上・下)

18世紀英国の哲学者(あるいは政治・経済学者)ヒュームのエッセイ集。上巻に政治、下巻に経済に関する文章が収められている。確かに鋭い洞察もある、が、今われわれにこれを使いこなせるかと言えば、当時の時代だからこそ通用した部分が大きいように思う。例えば、上巻で重きが置かれているのが「古代人口論」で、なかなか面白いのだけれど、われわれの問題意識とはあまり交わってこない。
本筋とは関係ないのだが、この本の訳者の小松茂夫氏は、上巻だけを出したまま30年間、この本の加筆訂正に費やしたらしい。もちろん、学習院大学教授としての職務に追われていたためだと言うのだが、それほど激務なのか。あるいは、翻訳に完璧を期していたのか。いずれにしても、私とは別世界の話だ。
市民の国について (上) (岩波文庫)
市民の国について (下) (岩波文庫)