ゼロ年代の想像力

著者の宇野氏は、1978年生まれの評論家。もう東浩紀は、若手ではなく大家らしい(別に皮肉な意味ではなく)。
本書は、主として2000年以降(ゼロ年代)の文芸・映画・マンガなどの作品を論ずるもの。著者は、1995年前後に、社会が変わったという断絶線を引く。95年以前の古い想像力の代表として著者が挙げるのが「新世紀エヴァンゲリオン」(!)。そこでは社会からの退却が語られる。だがそれ以降は、そうした退却すらも許されない、無根拠の中での「決断」を強いる社会になったと、著者は語る。
随分と乱暴な切断だと、最初は感じた。また、論じられている対象となっている作品に、私はあまり馴染みがないので、その論の当否を判定することもできず、もどかしい思いもした。だが読み進めるうちに、この乱暴な切断にも、特に若い世代にとっては、それなりにリアルな、根拠のあるものではないかと思うようになってきた。
著者の着地点は、どうも日常の大切さを再認識するところにあるようだ。こう要約すると、いかにも凡庸なようだけれど、ではそれ以外にどのような道があるというのだろうか。
ゼロ年代の想像力