沖縄密約
沖縄返還に関して日本政府が、国民に秘密裡に多額の予算を米国側に支払う「密約」を交わしていたことを暴露した毎日新聞記者の西山太吉氏は、その情報の出所が外務省の女性事務官であることを以って起訴され、さらに裁判の過程でその事務官と不倫関係にあったことを問題とされ、結局毎日新聞を退社して田舎に引っ込んだ。
その西山元記者自身が、沈黙を破って著した岩波新書。この密約が、何としても自分の手で返還を成し遂げたいと考えていた佐藤総理(当時)の政治的な思惑によって引き起されたものであることが論証され、当時の密約を未だに認めず、国民の知る権利を蔑ろにしている政府に対する怒りもこめられている。外交のことは全てをオープンにするわけにはいかないかもしれないが、過去の事実は明らかにすべきだろう。
ところで、本書には事務官とのことについては、一言も触れられていない。何らかの言及はあってしかるべきではなかったか。