ショートショート「ボケと介護」

[ショートショート]  ボケと介護

「どうもー、『ボケと介護』です。老人と孫でコンビを組んで、まだ結成1年目です。車椅子に乗っているのが僕のおじいちゃん、高森庄吉75歳です。おじいちゃん、あいさつして。・・・。ああ今日はちょっと調子が良くないようですね。そして僕が孫の高森翔太21歳です。学生と、芸人と、おじいちゃんの介護、三足のワラジを履いてます。名前だけでも覚えて帰ってください。

 おじいちゃんも、ごあいさつして」

「おお」

「見ての通りおじいちゃんはボケ老人なので、おじいちゃんがボケたところに、孫の僕がツッコミならぬ介護を入れていくというスタイルでネタをしていきます。ショートコント、ボケ老人と孫」

「おお」

「おじいちゃん、そろそろ財産譲って欲しいんだけど。おじいちゃんの預金通帳は仏壇の下だっけ。あった。だいぶ額が減ってるね、何に使ったの。ケータイ会社からの引き落としが多いなあ。変なオプションいっぱい付けられてんじゃないの。今度僕が代わりに行って解約してあげるね。その代わり浮いた分は僕がもらうよ」

「おお」

「ショートコント、ボケ老人と孫その2.おじいちゃん、財産譲って欲しいんだけど。おじいちゃんの預金通帳は仏壇の下だっけ。あれ、なんか隣に、昔の日記帳があるぞ。高森庄吉って、おじいちゃんの日記だね。何書いてるのかな。漢字が難しくって読めないや。あ、ここは読めるぞ。秀子さん、大好きって。おばあちゃんじゃないじゃん。おじいちゃんも若い頃はいろいろあったんだね」

「おお」

「ショートコント、ボケ老人と孫その3。あれ、ちょっと臭いなあ。おじいちゃんウンチした?すみません、ショートコントの途中ですが、失礼しておじいちゃんのおムツを代えさせていただきます。はい、こうして、こうして、こうして。あれ、おじいちゃんウンチ出てないじゃん。オナラだったのか。おじいちゃん、上手いボケだね。まあそのままオムツは代えますね。

 ショートコント、ボケ老人と孫その3.おじいちゃん、財産譲って欲しいんだけど。おじいちゃんの預金通帳は仏壇の下だっけ。あれ、ないなあ。どこだろう。冷蔵庫かな。あ、冷蔵庫にあった。おじいちゃんすっかりぼけてるなあ。仏壇の下に戻しておこう」

「おお」

「おじいちゃん、汗かいてくさくなってるね。舞台の上ですが失礼して、おじいちゃんを入浴させたいと思います。ええと、お風呂の準備お願いします。ありがとうございます。あれ、ちょっと熱いかな。おじいちゃんは割とぬるめが好きなんで、少し水を足してください。これでいいかな。はい、おじいちゃんお風呂入りますよ。気持ちいいかな」

「秀子・・・」

「秀子って誰?ここは死んだおばあちゃんじゃないんかーい。どうも、ありがとうございました」