高学歴ワーキングプア

増田聡さんのブログ(http://d.hatena.ne.jp/smasuda/)で知った。大学院生の数を急増させることになる「大学院重点化」構想が、著者が言うように、文科省と東大法学部の「陰謀」だったとは、私は思わない。しかし結果として、著者のような、大学院に進学したはいいが就職するポストがない若者を大量に生み出したことは事実だ。この政策の失敗に、誰ひとりとして責任を取ろうとしていない。
細かなところでは異論もあるけれど、著者による大学批判・文教行政批判はまったく真っ当だし、当事者が「上げにくい声」をあえて上げたところは、高く評価されるべきだ。特に大学関係者は必読だろう。
高学歴ワーキングプア  「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

ホージンのススメ

もう4年前の本だが、重要性は失われていない。著者が十年間の「行政法人」勤務で知った、その恐るべきムダ金遣いのありさまの実例が、これでもかとテンコ盛りである。実質的な仕事がほとんどなく、わずかな仕事さえパートを使ってやらせ、正規の職員は、ほとんど職場に出てこない。金だけは湯水のように流れ込んでくるので、愛人同伴で海外旅行などやりたい放題である。会計検査院も表面をなでるだけ。しかし、職員たちは幸せではなく、足の引っ張りあいに精を出す。研究成果を出しても、本省の意向に沿わない結論だと、ひねりつぶすだけでは済まず、懲戒の対象となる。
著者の在籍していたのは、この本では名前を直接書かれてはいないが、厚生労働省所管の「日本労働研究機構。現・独立行政法人労働政策研究・研修機構」であることを、後に著者自身が明らかにしている。
大学にも多少共通しているところはあるが、大学の方が多少はマシだと思うのは、学生さんというお客さんがいることと、学問の独立性が確保されている点だろうか。著者のブログ(http://wakabayashi.way-nifty.com/)によると、「労働政策研究・研修機構」は廃止が取りざたされている最中だそうだ。わたしも廃止した方がよいと思う。独立性のない研究機関法人などほとんど意味がない。それなら企業や官庁の内部に作ればよいのだ。
ホージンノススメ―特殊法人職員の優雅で怠惰な生活日誌